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FAAがUPSにドローン目視外飛行を許可、いっきにドローン宅配が拡大か

米連邦航空局(FAA)が同公式サイトで9月6日付けで発表したところによると、同局は米インテグレーター/エクスプレス宅配大手業者であるUPSのドローンを使った小包配送について、ドローンの「目視外飛行」を許可するとした。
これは、UPSの配送ドローンが従来よりもより長距離の飛行を認められ、より遠くの地点までの配送が可能になることを意味する。

今回のFAA承認以前の大手宅配業者によるドローンの運航は、安全な飛行を確保するために飛行状況が目視で追跡できる範囲に限られており、そのため飛行中はそれを監視する地上要員もつねに必要としていた。
しかしUPSでは今後、目視距離以上にドローンを飛ばすことが可能になったため、新たな方策として地上レーダーシステムを設置して空をスキャンし、航空交通の潜在的な問題をチェックしながら、問題がある場合にも対処できるように“遠隔操縦士”をレーダーサイトに常駐させる予定だ。


目視外飛行を許されたUPSの宅配ドローン“M2 quadcopter”(230913)
UPSが使用するドローン「M2クアッドコプター」を供給するメーカー・マターネット(Matternet)の創設者兼最高経営責任者(CEO)であるアンドレアス・ラプトプロス氏は、目視外飛行に対するFAAの承認は「米国全土でのドローン配送サービスの拡大に重要な役割を果たすだろう」と述べるとともに、「ドローン配達を日常生活の一部にするという私たちの目的に向けた新たな一歩だ」と付け加えた。

マターネットは19 年にUPSと提携してすぐに、フロリダ州において広い病院敷地内における医療物資や医薬品のドローン配送を開始した。その後、21年にはUPSがノースカロライナ州の医療センターに新型コロナワクチンを配送する際に、M2ドローンを配備するなどさまざまな局面で、UPSとの提携を強化してきた。

UPSは2019年に、航空配送サービスの開発を目的としたUPSフライト・フォワードと呼ばれるドローン子会社を立ち上げ、ドローン配送への野心を表明した。FAAから今回、目視外飛行の許可を得たことは同社にとって画期的な瞬間であり、今後の数カ月・数年でドローン配送サービスを大きく飛躍させることになりそうだ。

一方、2013年からドローン配送サービスを開発してきた先駆者アマゾンも、すでに昨22年末からカリフォルニアとテキサスのいくつかの新しい拠点でドローン宅配実証実験を積極的に進めてきている。
同社のドローン配送の中心となる自律飛行型航空機は過去10年間に多くの設計を経て、最新型機は安全で信頼性の高い操作が可能になっている。アマゾンでは耐久性が向上し、航続距離が現在の9マイル(約14.5キロ)を超えた最新のドローンを24年に発表する予定だ。


アマゾンは10年前からドローン宅配開発に取り組み、規制と戦ってきた(230913)
そうした長距離飛行ドローンを開発したアマゾンも、今回のFAAによるUPSへのドローン目視外飛行の容認を歓迎するはずで、次は自社のドローン宅配戦略もその規制緩和に応じた方向に沿って改革していくのではないか。
米国ではウォルマートなどの大手スーパーもドローン配送分野に参入しており、アメリカでのドローン宅配戦争にはマイルストーンとなる新展開の局面が訪れたと言えそうだ。